関連記事はこちら:そろそろ2年間Mayaa使ってわかったことを書く
上記記事を書いたのが2011年ですので、あれから3年。まだMayaa使ってます(笑)
一つのプロダクトをずっとメンテし続けられるって、ビジネス的に成功した証拠ですから素晴らしいです!というわけで、10年の半分Mayaaを使い続けて思ったことを書いてみようと思います。
Mayaaは長期メンテに耐えるライブラリか
もちろんYesです。もう作られてから10年近い老舗プロダクトで、Javaは1.4準拠だったりしますが、それを加味しても十分現役で使えます。それは、私の勤務先でもずっと使い続けられていることが証拠です。
教育コスト・生産性は
当初とっつきにくい、教育コストがかかると思いましたが、大して問題になりませんでした。既に10人以上の開発者がMayaaを使った開発をしていますが教育コストが高いと思ったことはありません。
この辺りは、「2年間~」のときに書いたように開発ルールを定めたことが効いたのだと思います。はじめにビビってこれらのドキュメントを整えたことがかえって組織には良かったのかもしれません。
コードとデザインが分離するのでフロントのコードがスパゲッティにならないことも良かったです。最初のめんどくささは確実に後から利益となって返済されています。
デザイナーとの相性
あれから、想像した以上にデザイナーと開発者のすれ違いというものを多く目撃してきました。しかしそれはそもそも話せば分かる問題だったり、Javaプログラマーは業務システムを多く経験してきていてフロントに疎いことが問題だったりするためであり、むしろ、Mayaaを使うことで、一緒のプロダクトを同時開発することで発言した必然的なことであるような気がします。
多くの組織では、デザイナーと開発者の線を明確に切るようです。うちのように両者が入り乱れて開発できる現場というのはそんなに多くないでしょう。それができることは、お互いに、そしてプロダクトにとっても、ユーザーにとっても良いことだと思います。
パフォーマンス
今私が全力で取り組んでいる課題です。インフラがクラウド化してパフォーマンスとコストが直結したこと、Webの利用が広がりユーザトラフィックに対してサーバの余裕はもはやないこと、そしてWebブラウザの性能が向上したこともあり、低コストで、高パフォーマンスを実現することがWebアプリケーションに求められています。
そんな中で、Mayaaははっきり言ってパフォーマンスが良くありません。
Mayaaはかなり頑張っています。まず重要なのがキャッシュです。SpecificationCacheというオブジェクトに、ページのツリーデータがキャッシュされていきます。このため、普段のレンダリングは十分に高速です。ただし、キャッシュを行った結果は次の2つの問題点が発生します。
- キャッシュ自体のメモリのオーバーヘッド
- 更新直後などのキャッシュがない状態のパフォーマンス
キャッシュ自体のメモリオーバーヘッドは大きいです、たった数10KB程度のテンプレートファイルが1MBを超えたりします。特にJava6の古いマイナーバージョンや、Java5以前を使っているなら、即Java7以降に移行するべきです。Java6u14以降には圧縮ポインタという機能が搭載されています。詳しくはこちらに書きました。→64bit環境でなんかheapを多く消費するなあと思ったら
それでも、メモリを食うことは変わらないので、なるべく大きめにヒープを割り当てるようにしてください。トラフィックやサイトの種類にも依存しますが目安としては全テンプレートファイルの10から50倍程度用意するべきだと思います。
キャッシュがないときの問題も大きいです。そこで、Mayaaは可能な限り、キャッシュがない状態を防ごうとしています。ヒープがいっぱいになってキャッシュがGCによって消えてしまった場合や再起動した時も、ハードディスク上にserializeしておき、そこから復元することでXML解析の時間を短縮しようとする機能があります。この機能はデフォルトでOFFになっていますが、ONにしても問題が発生することはないので、プロジェクトの初期段階からONにすることをおすすめします。
キャッシュがない状態でのレンダリングで最も時間を食っている原因は、Rhinoスクリプトのコンパイル・最適化です。Rhinoスクリプトをそのまま実行すると遅いので、一旦Javaクラスとしてコンパイルするとう最適化を行っています。そして、Javaクラスは繰り返し実行するにつれてJITコンパイルされ次第にネイティブコードに近くなっていきます。なので、数回同じページを表示すると、JSPやServletで画面を構築した場合に劣らないくらい高速になります。VMを再起動したり、テンプレートを更新するとこれらキャッシュは消えてしまいます。コンパイルされたRhinoスクリプトはtransientなので、シリアライズ・デシリアライズされると最適化がはじめからやり直しです。この件については、今後Mayaa自体が効率化することを望みます。
究極のパフォーマンス改善は、そもそもRhinoScriptを使用しないことです。RhinoScriptを使用しないためには、独自のProcessorを作成する必要があります。Mayaaのソースを読んでいくことで、TextCompiledScriptが使用されている箇所を軒並み潰して、Reflectionなどを使用して直接Javaコードを呼び出すようにすることで、ページの処理速度が最大5倍程度速く出来ました。
拡張性
かなり良いです。5年間で本体をforkし独自のコードを挿入する必要があったことはありません。
Processor, InjectionResolver, Builderなどを独自化することで全く別のテンプレートエンジンに仕上げてしまうこともできます。
ただし、一方で、拡張するには非常に多くのコードを書かなければいけなかったり、キャッシュやMayaaツリーの解析など、あらゆる機構が独自で実装されているため、ソースコードのかなりの部分を精読しなければなりません。なんでもできるけど、その難易度は高いといったところです。
XPathMatchesInjectionResolverは無効にするべき
Mayaa User Mailing listに私が報告したとおり、こいつがあるとパフォーマンスが低下します。またメンテ性が悪いのではじめから使うべきではありません。
org.seasar.mayaa.provider.ServiceProvider
を編集し、下記のようにコメントアウトしてしまいましょう。
<!-- <resolver class="org.seasar.mayaa.impl.builder.injection.XPathMatchesInjectionResolver"/> -->
動的なページの構築、MayaaはSPAよりPJAXと相性が良い
最近はSPAといって静的なHTMLページ一枚でWebアプリを構成し、JavaScriptによる非同期リクエストにサーバはJSONを返すことで画面を構築していくというアプローチが普及しつつあります。AnqularJSなどがそのページの作り方をサポートするライブラリとして有力です。
この構成でサイトを作る場合は、そもそもMayaaの出る番がありません。しかし、もし作っているものが、Webサイトの延長で、全ての画面の状態にはURLがあるという状況においてはSPAにせず、Mayaaを使ってPJAXを実装するとスムーズです。
つまり、Ajaxに対してレスポンスするのはJSONではなく、普通のHTMLページであり、jQueryを使うなどしてここから必要な断片を画面に上書きするというアプローチです。Push Stateを使用してURLも書き換えてしまえばSEOもバッチリです!このURLが静的コンテンツとしてMayaaにリクエストした時のページのURLでもあり、静的ページと動的ページの両方をMayaaによって実装することができます。
2014年以降もMayaaは最強か?
これについては、なんとも言えないでしょう。
拡張しやすさを求めるならMixer2、生産性を求めるならThymeleafもあります。パフォーマンスを求めるならJSPで割り切るのも手です。
デフォルト状態でのデザイナーとの相性が非常に良いので、CMSのような物を作りたい場合は、Mayaaは未だにかなり良い選択肢です。この領域にはWordPressというそもそものデファクトスタンダードがあるので、わざわざJavaで作るという機会はあまりないかもしれません。でも、もしそのタイミングが訪れたなら、WordPressのテーマやプラグインよりもずっと良い基盤です。
パフォーマンスの問題がシビアな状況ではあまり適切とはいえません。あらゆる汎用エンジンは何かしらパフォーマンスとトレードオフの関係にあります。いっそ、独自でテンプレートエンジンを作るのも手だと思います。
Mayaaの柔軟性を取り入れつつ、パフォーマンスも良くしたい場合、私が業務で取り組んでいるRhinoを使わないしくみがもし汎用化できて、公開することができれば最高ですね。それは私の業務的にはプライオリティが高いことなので、案外実現してしまう可能性もあります。が、まだ約束できることではないことので、現時点ではまだ考慮にいれられないことが残念です。
コメント失礼いたします。
私は、会社にてサイト運営を担当することになったのですが、弊社サイトがMayaaで構築されており、私自身もMayaaが初めてで、運用に困っておる状態が続いております。また、数々のデザイナーさんがもう無理!とお断りをされてしまったりもしておりまして……。ブログを拝見いたしまして、もし可能でしたら、ぜひ一度Mayaaの運用についてなど、ご相談などをさせていただけたら…と思ったのですが可能でしょうか。お忙しいところ恐れ入りますが、お伺いしたく、どうぞよろしくお願いいたします。
イシイエリさん、ご記入いただいたメールアドレスにメールを送らせて頂きました。よろしくお願い致します。